冬の朝、息で管を温めるのはNG?木管の慣らし方

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管楽器
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冬の朝、息で管を温めるのは実はNG? 管楽器を持つ三笠先生のイラスト
かなで

かなで
フク爺さん、寒い朝は木のクラリネットが冷たくて…。息をハーッと吹き込んで、管の中をあたためてから吹いてもいいですか?
フク爺

フク爺
おや、それは割れの元になるんじゃ。
かなで

かなで
えっ!? あたためるのが、よくないんですか…? じゃあ、どうすればいいんでしょう。
フク爺

フク爺
わしは手やふところで、ゆっくり室温に慣らしとるよ。順に話そうかの。

11月7日は立冬です。朝晩の冷え込みが増すと、フルート、クラリネット、サックスなどの木管楽器も、ケースから出した瞬間にひやりとする季節になります。

この記事では、冬の朝の吹き始めで気をつけること、吹いたあとのお手入れ、しまうときの注意、そして自分でできることとお店にご相談いただくことを、読者のみなさんが気になる順にお話しします。なお、ここでいう木管楽器には、フルートやサックスのように金属でできた楽器も含まれます。木管楽器は音の出し方で分けた呼び名で、材質で分けているわけではないからです。

「息であたためるのは、本当にいけないの?」「新しい楽器は、どれくらい吹いていいの?」「どこまで自分で手入れして、どこからお店?」。そんな疑問に、ひとつずつ答えていきます。

冬の朝、息で管をあたためてから吹いてもいい?

息で管の内側だけをあたためるのは、割れの原因になるのでやめましょう。冬は、手やふところで楽器をゆっくり室温に慣らしてから吹くのが基本です。管の内側だけが急にあたたまると、外側との温度差が生まれ、とくに木製の管体では割れにつながります。

やり方 おすすめ度と理由
手やふところで、室温にゆっくり慣らす ○ 楽器全体がじわじわとなじむため、負担が少ない
息で管内だけをあたためる × 内側だけが急にあたたまり、割れの原因になる

とくに木製の管体(ピッコロ、木製のフルート、クラリネット、オーボエなど)は、温度や湿度の変化に敏感です。冬の朝は、早く吹きはじめたくなる気持ちをぐっとこらえて、ケースから出したら少し時間をおき、楽器を両手で包んであげましょう。

かなで

かなで
息ならすぐあたたまる気がして、ついやっちゃいそうです…。急がないほうが、楽器にはやさしいんですね!
フク爺

フク爺
そうじゃ。わしらの手はあったかいが、ゆっくりじゃ。楽器にはそれがちょうどええんじゃよ。

急な温度・湿度の変化は、楽器のどこに影響する?

管体の割れ、ジョイント(つなぎ目)の入りにくさ、キイとタンポのバランスの狂いにつながります。急な温度や湿度の変化が招く不調は、次の3つです。

  • 管体にひびが入る、割れる
  • ジョイントが入りにくくなる
  • キイとタンポ(穴をふさぐクッション)のバランスが狂う

冬の屋外から暖房の効いた室内へ、あるいはその逆に移動すると、楽器は短い時間のうちに大きな温度変化を受けます。通学や通勤、教室への移動で冷えきった楽器を、あたたかい部屋でいきなり吹くのは避けたい場面です。

「音が前と違う」「キイの調子が変わった」と感じたとき、その原因が温度や湿度の変化だった、ということもあります。気になるときは、後述のとおり、お店で状態を見てもらいましょう。

通学や朝練で冷えた楽器は、どう扱えばいい?

外で冷えた楽器は、手やふところで室温にゆっくり慣らしてから吹きます。吹奏楽部の朝練や、教室へ向かう道中で、楽器が冷えきってしまう場面は冬によくあります。次の流れを目安にしてください。

  1. 室内に着いたら、ケースを開けて楽器を取り出す
  2. 手やふところで包み、室温になじませる
  3. 息だけで管内をあたためることは避ける
  4. 吹いたあとは、水を丁寧に取ってからしまう

慣らす時間の長さは決まっていません。急がず、手やふところでゆっくり室温になじませてから吹きましょう。

朝練の前に、ケースから出す時間を少し早めにしておく、という工夫もあります。部活動や教室では、集合してすぐ音出しをする場面もあるでしょう。そんなときも、まずは楽器を手に持って、あたたかい場所でなじませてから吹きはじめるようにすると、慌てずに済みます。移動中は、ケースの中で急な温度の変化を受けないよう、持ち歩き方にも気を配ってあげてください。

新しい楽器や、久しぶりの楽器は、どう吹き始めればいい?

最初の1週間は1日20〜30分から始め、その後10分ずつ延ばしていきます。新品の楽器や、長く使っていなかった楽器は、いきなり長時間吹かないようにしましょう。

期間 吹く時間の目安
最初の1週間 1日20〜30分
その後 10分ずつ延ばしていく
最初の1〜2か月 長時間は吹かない

冬の寒い時期に楽器を新調された方や、年末年始のお休み明けに久しぶりに吹く方は、ぜひこの目安を思い出してください。短い時間から少しずつ慣らす進め方を、目安として覚えておいてください。

吹く側の唇や息の使い方も、ひさしぶりだと疲れやすいものです。「今日はここまで」と区切りをつけ、楽器をいたわりながら少しずつ時間を延ばしていくことが、長く付き合うコツになります。

吹いたあとは、何をすればいい?

管の中の水を取り、タンポの水分を取り、リードの水分を取ってからケースにしまいます。木管楽器に共通するお手入れの流れは、次のとおりです。

  1. 管の中の水を、スワブ(掃除用の布)やガーゼで取る
  2. タンポの水分は、クリーニングペーパーを挟み、キイを軽く数回押さえて取る(押したままペーパーを引き抜かない)
  3. リードは、水分を取ってからリードケースに入れる
  4. ジョイントの汚れを拭く
  5. 濡れたクロスやガーゼを、楽器の上に乗せたままケースを閉めない

濡れた布を乗せたままケースを閉めると、キイが変形する恐れがあります。濡れたガーゼをケースの中に入れっぱなしにすることも避けましょう。ベタつきを応急的に抑えるパウダーペーパーは、溜まるとタンポの柔軟性が落ちるため、使うのは最小限にします。

フク爺

フク爺
水を取るのは、一日の終わりの挨拶みたいなもんじゃ。

フルートは、冬にどんなお手入れが必要?

組み立てる前に手を清潔にし、吹いたあとはクリーニングロッドにガーゼを巻いて管内の水を取ります。フルートのお手入れの流れは次のとおりです。

  • 組み立て前:手を清潔にする(硫黄を含む薬が、銀を変色させることがあるため)
  • 頭部管の外側と、主管の内側の差し込み部分を、ガーゼで拭く。足部管も同様に
  • 組み立ては、キイに力をかけず、真っ直ぐ差し込む
  • 吹いたあと:クリーニングロッドにガーゼを巻き、巻いた方向に回しながら管内の水を取る。ロッドの先の孔にガーゼを通し、金属が出ないようにする
  • 主管は両端から水を取る
  • 木製の管体は、割れを防ぐため、とくに念入りに水を取る
  • 表面は、ポリシングクロスで拭く。キイに力をかけない

フルートにはリードがありません。「フルートのリード」という言い方は誤りで、フルートは金属製でも木管楽器に分類されます。ピッコロは木製が多いので、水分をよく取ってください。バネが外れたときは、フックの溝の中心へ戻し、強さが変わらないようにします。

クラリネットとサックスは、どう違う?

スワブを通す向きと、席を離れるときの扱いが違います。2つの楽器の違いを表にまとめました。

クラリネット サックス
管内の水取り スワブをバレル(上の部分)側から通す。無理に抜き取らず、マウスピースを傷つけない スワブ・ガーゼで水を取る
演奏の合間 できるだけ管内の水を取る。マウスピースまわりはガーゼや綿棒で 席を離れるときは、短時間でもケースに入れる
待ち時間 — ひざの上にベルを置く。ジョイントにソケットをはめ、押し込まずにケースへ

組み立てるときにキイへ力をかけないのは、どの楽器でも共通です。ひびが入った場合や、タンポをすべて交換するような作業は、お店の領域になります。

オーボエやファゴットなど、ダブルリードの楽器は何が違う?

水分を管内に残さないことと、スワブを通す向きを間違えないことが大切です。オーボエのお手入れは、次の順に進めます。

  1. リードは、チューブ(根元の部分)を持って外す
  2. リードの水分をガーゼで取って、リードケースに入れる
  3. スワブの重りは、管内を傷めないよう、ベル(朝顔の部分)から入れる
  4. スワブを上下させて水を取る。上管の先端から抜かず、ベル側から出す

管内に水が残ると、ひび割れの原因になります。ファゴットも、演奏後の水分取りがお手入れの中心です。ジョイントやコルク、キイに無理な力をかけないことも共通のルールです。冬の朝に息で管内だけあたためない、という注意は、オーボエなど木製の楽器にも当てはまります。

リードを付けっぱなしにしたり、スワブが管内で詰まったりしたときは、無理に引っ張らず、お店に相談してください。タンポをすべて交換するような作業や、割れの修理は、お店で行う内容です。

リードは、吹いたあとどう扱えばいい?

水分を取ってから、リードケースにしまいます。クラリネットやサックスのリードは、使ったあとに水分を取り、リードケースに入れるのが基本です。濡れたまま放置せず、水分を取ってからリードケースに入れましょう。

  • 吹いたあとに、リードの水分を取る
  • リードケースに入れて保管する
  • マウスピースのまわりは、ガーゼや綿棒で拭く(クラリネットの場合)

リードは消耗品なので、状態が気になったときは、お店で相談しましょう。

ジョイントがきついときは、どうすればいい?

無理に押し込まず、ジョイントの汚れを拭いてからまっすぐ差し込みます。急な温度や湿度の変化で、ジョイントが入りにくくなることもあります。

  • ジョイントの汚れを、ガーゼなどで拭く
  • コルクグリスは、付けすぎないよう注意する
  • キイを握って力をかけず、ジョイント部分を持ってまっすぐ差す
  • 入りにくい状態が続くときは、お店に見てもらう

温度や湿度が変わると、ジョイントの感触が変わることがあります。入りにくいからといって力任せに押し込むと、キイを曲げたり、管体を傷めたりする恐れがあります。

フク爺

フク爺
力まかせはいかんのじゃ。きついときは、わしはまず汚れを拭いて、まっすぐ差してみとるよ。それでもだめなら、わしのところへ持ってきてくれればええ。

ケースにしまうとき、置き場所で気をつけることは?

火の近く、直射日光、車内への放置は避けてください。夏の車内は70度を超えることがあり、楽器の放置は禁物です。冬でも、置き場所には注意が要ります。

  • 吹いたあとは、水分を拭いてケースに入れる
  • ストーブなど火の近くには置かない
  • 直射日光の当たる窓際に置かない
  • 車の中に置いたままにしない

楽器を持ち歩くときは、急な温度や湿度の変化に気を配りましょう。

冬の暖房器具のそばや、日の当たる窓辺は、気づかないうちに楽器にとって負担になる場所かもしれません。使わないあいだは、ケースに入れたまま、急な温度の変化を避けられる場所に置くことを意識してみましょう。ケースを開けるのは、吹くときと、状態を見るときにしておくと、気を配りやすくなります。

しばらく吹かないときは、どう保管すればいい?

2〜3か月に一度は、ケースから出して、状態を見てください。長く保管している楽器では、次の点を確かめます。

  • キイ、タンポ、コルクが圧迫されていないか
  • カビが生えていないか
  • 虫がついていないか

年末年始の帰省や、受験・仕事などで、しばらく吹けない期間が出ることもあります。片づける前に水分を拭き取り、ケースの置き場所を確認しておきましょう。久しぶりに吹くときは、前に述べた「20〜30分から」の慣らしを思い出してください。

奈良の冬は、木管楽器にどんな負担をかけるの?

奈良盆地の冬は乾燥が厳しく、昼と夜の気温差も大きいため、楽器にとっては負担の大きい季節です。天理楽器では、奈良の夏前(5〜6月)と冬前(10〜11月)を、木製の楽器のメンテナンスにとくに大切な時期と考えています。

季節 楽器にかかる負担
夏 湿気による木材のふくらみ、カビ
冬 乾燥による木材の縮み、割れ、音の変化
季節の変わり目 昼夜の気温差による温度・湿度の変化

金属でできた楽器でも、キイの下にはタンポ(クッション)やコルクなど、湿度や温度の影響を受ける部品が使われています。外の気温が下がる10月から11月の「冬前」に、吹き方とお手入れの習慣を整えておきましょう。

キイが重い、音が漏れる気がするときは?

わずかな温度・湿度の変化や外からの力で、キイとタンポのバランスは狂います。2〜3か月に一度の調整が目安とされています。「音が漏れる」「キイが重い」「タンポがくっつく」といった症状は、自分で分解して直そうとせず、お店に持ち込んでください。

その場でできること お店にご相談いただくこと
タンポの水をペーパーで取る タンポの交換
ベタつきにパウダーペーパーを最小限で使う キイの調整
外れたバネを、溝の中心に戻す(フルート) 原因が分からない不調全般

故障かな、と思ったときは、現物を見ないと判断できません。「どんな症状か」と「いつからか」を伝えるだけで構いません。天理楽器では、修理・調整は店舗への持ち込みでご相談いただけます。郵送での相談も可能です。

フク爺

フク爺
原因が分からんときは、わしも「知らん。見る」と言うんじゃ。楽器は見てみんことには、何も言えんからのう。

フルートやサックスは、何歳ごろから始められる?

フルートは小学3・4年生ごろから、サックスは小学5・6年生ごろからが目安です。これは天理楽器の音楽教室での、体格上の目安です。

楽器 始められる年齢の目安 レッスンの基本
フルート 小学3・4年生ごろ〜 月2回・1回60分
サックス 小学5・6年生ごろ〜 月2回・1回60分

管楽器のレッスンは、最初に音の出し方や口の形(アンブシュア)の確認から入るため、1回60分で進めています。体験レッスンは、無料・予約制で、およそ30分です。楽器の貸し出しもあります。お手入れで気になることは、店舗にご相談ください。

冬のあいだ、どこを見ればいい?

吹く前の慣らし、吹いたあとの水取り、しまうときの確認、ときどきの点検の4つを習慣にします。

  1. 吹く前:楽器を手で包んで、室温に慣らす(息であたためない)
  2. 吹いたあと:管内の水、タンポの水、リードの水を取る
  3. しまうとき:濡れた布を入れていないか、置き場所が火・直射日光・車内になっていないかを確かめる
  4. ときどき:ジョイントが入りにくくないか、キイが重くないかを確認する

変化に気づいたら、メモしておくと、お店で相談するときに役立ちます。

どれも特別な道具や難しい技術は要りません。毎回の吹き始めと片づけの流れの中に、この4つを組み込んでしまえば、冬の楽器とのつきあいを続けやすくなります。自分でできることは自分で、迷うことや分からないことはお店で、と役割を分けておくと、楽器も気持ちも守れます。

フク爺

フク爺
息でぬくめるのではなく、手でぬくめるのがええと、わしは思っとるよ。
かなで

かなで
わかりました! 明日の朝は、手で包んでから吹きます!

よくある質問

冬に木管楽器を吹く前、息で管をあたためてもいいですか?
息で管内だけをあたためるのは、割れの原因になるのでやめましょう。冬は手やふところで、室温にゆっくり慣らしてから吹くのが基本です。割れが心配なのはとくに木製の管体で、木製のピッコロなどは気をつけてください。
新品の木管楽器は、どのくらいの時間から吹き始めればいいですか?
最初の1週間は1日20〜30分、その後は10分ずつ延ばしていくのが目安です。最初の1〜2か月は、長時間吹かないようにしましょう。久しぶりに吹く楽器にも当てはまります。
木管楽器を吹いたあと、ケースにしまう前に何をしますか?
管の中の水をスワブやガーゼで取り、タンポの水分はクリーニングペーパーで取ります。リードは水分を取ってからリードケースへ。濡れたクロスやガーゼを楽器に乗せたままケースを閉めないでください。キイが変形する恐れがあります。
サックスやクラリネットで、演奏の合間に気をつけることはありますか?
クラリネットは、合間にもできるだけ管内の水を取りましょう。スワブはバレル側から通します。サックスは、席を離れるときは短時間でもケースに入れ、待ち時間はひざの上にベルを置きます。どちらも組み立てるときは、キイに力をかけないのが共通のルールです。
木管楽器の調整は、どのくらいの頻度でお店に出せばいいですか?
2〜3か月に一度の調整が目安とされています。わずかな温度・湿度の変化や外からの力で、キイとタンポのバランスが狂うためです。天理楽器では、修理・調整は店舗への持ち込みでご相談いただけます。郵送での相談も可能です。
長く吹かない木管楽器は、どう保管すればいいですか?
2〜3か月に一度、ケースから出して、キイ・タンポ・コルクの圧迫、カビ、虫を確認してください。片づける前に水分を拭き取り、火の近く、直射日光、車内への放置は避けます。久しぶりに吹くときは、20〜30分から慣らしてください。
冬にジョイントがきつくて入らないときは、どうすればいいですか?
力で押し込まず、ジョイントの汚れを拭いて、まっすぐ差し込んでください。コルクグリスは付けすぎに注意します。急な温度や湿度の変化で入りにくくなることがあるため、状態が続くときはお店に見せてください。キイに力をかけたまま差し込むと、曲げてしまう恐れがあります。

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制作:天理楽器