ピアノの前の1分|グーパー体操と指ウェーブのやり方
夜が長くなり、家で過ごす時間が増えてくるこの季節。「ピアノを弾いてみたいな」と思いながら、まだ一歩を踏み出せていない方もいらっしゃるかもしれません。
この記事は、ピアノを弾き始める前の、ごく小さな準備のお話です。取り上げるのは、椅子への座り方、手の形、そして1分でできる4つの指の体操の3つです。特別な道具はいりません。鍵盤がご自宅になくても、体操の部分はすぐに試せます。
ここでご紹介するのは、ピアノを弾くときの準備の一例です。実際のレッスンの進め方は、講師や生徒様によって異なります。気になる点は、体験レッスンで講師にお尋ねください。
ピアノの前に座る前に、まず何を整えればいいの?
順番としては、「座り方」「手の形」「指の体操」の3つです。この3つはばらばらの話ではなく、すべて「無理な力を入れずに指を使う」ためにつながっています。
| 順番 | 整えるもの | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 座り方 | 腕や指先を自由に動かせる土台をつくる |
| 2 | 手の形 | 手のひら全体で、やわらかく鍵盤に触れる |
| 3 | 指の体操(1分) | 力みを抜き、指の動きをなめらかにする |
初めてピアノを弾く方は、つい「どの鍵盤を押すか」ばかりに意識が向きます。けれども、同じ鍵盤を押すにも、座り方や手の形といった身体の準備があります。そこで、まずは音を出す前の準備から、順番に見ていきましょう。
座り方は、どうするのが基本?
基本は、椅子に「浅く」腰かけることです。椅子の座面にたっぷり深く座るのではなく、座面の手前側に腰を置くイメージです。
理由は、深く腰かけると重心が後ろにかかってしまい、腕や指先、そしてペダルを踏む足を自由に動かしにくくなるからです。ピアノは、手だけでなく、腕や身体全体を使って弾く楽器です。身体の重みが後ろに残っていると、前に出したい腕や指が働きにくくなります。
椅子の高さは、どう決める?
高さの目安は、肩に余計な力が入らず、手首が上がりすぎたり下がりすぎたりしない位置です。鍵盤に手を置いたとき、手首がほぼ自然な高さにあれば、よい状態といえます。
高さが合わないと、弾きにくく感じることがあります。ご家庭で電子ピアノやキーボードを使う場合も、考え方は同じです。座面の高さを調節できる椅子であれば、少しずつ変えて、力が抜ける位置を探してみてください。
鍵盤との距離は?
鍵盤に手を置いたとき、ひじよりも身体が後ろにある、という位置関係が大切です。机に向かって作業するときよりも、少し広めの距離感になります。机に向かうときよりも広い距離感で座る形を、ひとつの目安にしてみてください。
ひじの角度は、腕をなめらかに動かしやすい、無理のない角度が目安です。ピアノとの距離や椅子の高さを調整しながら、この角度に近づけていきます。
| 確かめたいこと | よい状態の目安 |
|---|---|
| 腰かけ方 | 座面の手前側。深く座り込まない |
| 肩 | 持ち上がらず、力が入っていない |
| 手首 | 上がりすぎず、下がりすぎず、自然な高さ |
| ひじ | 身体よりも前にある。角度は無理のない範囲が目安 |
ここまでで、「身体に無理がなく、指や腕を楽に使える姿勢」を探すことが目的だと分かります。正しい座り方は、効率のよい練習にも、上達にも関わってきます。最初のうちは、座ってみて「どこかに力が入っているな」と感じる場所を探してみるだけでも十分です。
手の形は、どんな形が基本なの?
基本は、手のひら全体に丸みをもたせた、ふんわりとした形です。指先だけを丸くするのではなく、手のひらから整えるのがポイントです。
イメージしやすい例を、3つ挙げます。
- ボールを軽くつかむときの手の形
- おにぎりを軽く握るときの手の形
- お水を両手ですくうときの手の形
どれも、ぎゅっと握りしめるのではなく、空間を残して、やさしく包むような形です。ピアノは指先だけで弾くものではありません。手のひら全体で支え、そこから指が自然に動くようにするのが、基本の考え方です。
まず、鍵盤がなくても、机の上で試してみてください。手の力を抜いて、ボールを軽くつかむ形をつくります。手のひらに空間が残っているかを、見てみてください。
鍵盤を押さえるときに、気をつけることは?
手の形を保ったまま、手や腕の重みを使って鍵盤を押さえることです。指先だけに力を集めて押そうとしない、というのが大切な考え方です。
余計な力が入ると、指の第1関節(爪に近い、指先側の関節)がつぶれてしまい、せっかくの手の形が崩れます。ですから、力を入れすぎないように気をつけたいところです。次の順番で意識すると、整理しやすいでしょう。
- 浅く腰かけ、肩とひじの力を抜く
- 手のひらに丸みをつくる
- その形を保ったまま、腕の重みを指先に預ける
- 指先だけで弾こうとしていないか、第1関節がつぶれていないかを確かめる
「重みを預ける」という感覚は、言葉だけでは分かりにくいかもしれません。気になる方は、体験レッスンで講師にお尋ねください。ご自宅では、まず「指先だけで頑張らない」ことだけを覚えておいてください。
1分間でできる指の体操には、どんなものがあるの?
「グーパー体操」「指ウェーブ」「指のあいさつ」「親指回し」の4つです。いずれもピアノに向かわずにできるので、練習の前や、すき間の時間に試せます。回数はどれも5回程度が目安です。時間は、ゆっくり動かして1分前後を目安にしてみてください。
| 体操 | やること | 意識すること |
|---|---|---|
| グーパー体操 | 手を握る、開く、を交互にくり返す(5回程度) | ひじ・手首・肩の力を抜き、やわらかく動かす |
| 指ウェーブ | グーの形から、指を1本ずつ出してパーに戻す(5回程度) | 隣の指へ、波のようにつなげる |
| 指のあいさつ | 親指を除く各指を、順番に動かす(各指5回ずつ程度) | 指のつけ根を意識する |
| 親指回し | 親指をゆっくり回す(5回程度) | つけ根から指先まで、やわらかく動かす |
4つに共通しているのは、「速くやる」「強くやる」ことが目的ではない、という点です。力まず、やわらかく動かすことを優先してください。
グーパー体操は、どうやるの?
手をぎゅっと握って、ぱっと開く。これを交互にくり返します。回数は5回程度です。
- グー(握る)とパー(開く)を、交互にくり返す
- ひじ、手首、肩の力が入っていないかを、動かしながら確かめる
簡単な動きに見えますが、「やわらかく動かす」と意識すると、思ったより難しく感じるかもしれません。体も手もこわばらず、弾力をもって動かすことが目標です。特に、ひじの力を抜くことを意識すると、身体全体が楽になることがあります。
肩やひじに力が入っていないかは、自分ではなかなか気づけません。鏡の前で行ったり、ご家族に見てもらったりするのも、よい方法です。
指ウェーブは、どんな順番で指を動かすの?
グーの形から、小指、薬指、中指、人差し指、親指の順に、1本ずつ出していき、最後にパーの形にします。この一連の動きを、5回程度くり返します。
最初は、1本ずつ、確実に出せれば十分です。テキパキと動かせるようになったら、前の指が動ききる前に次の指が動き出すように、波がつながっていくイメージで、なめらかに動かしてみましょう。
コツとして、声に出しながら行う方法があります。たとえば「トゥルルル」と言いながら動かすと、不思議となめらかになりやすいというコツです。少しユーモラスですが、ご自宅で気楽に試せる工夫です。
指のあいさつと親指回しは、何のための体操なの?
どちらも、「指はどこからどこまでなのか」を意識するための体操です。私たちは普段、指先だけで物をつかんでいる感覚になりがちですが、指は、手のひらの奥のつけ根から始まっています。
- 指のあいさつ:親指を除く各指で、つけ根を意識しながら、順番に動かします(各指5回ずつ程度)
- 親指回し:親指のつけ根から指先までを意識して、ゆっくり回します(5回程度)
特に親指は、やわらかく動くことがピアノを弾くうえで重要なポイントです。つけ根から動かす感覚をつかむことが、この体操のねらいです。
体操は、いつ、どのくらいの頻度でやればいいの?
回数の目安は、どの体操も5回程度です。練習の前か、あいた時間に気軽に行うのが基本です。1分ほどで終わるので、「練習前の習慣」にしやすいのが特長です。
| 場面 | 使い方の例 |
|---|---|
| 練習の前 | 練習の前に、4つの体操を一通り行う |
| すき間の時間 | 家事の合間や、お休みの前に、グーパー体操だけ行う |
| 手が疲れたとき | 力みがないか、グーパー体操で確かめる |
1日にどのくらい練習するのがよいかは、お子さまの年齢や、楽器、ご自身の生活によって変わります。無理のない範囲から始めて、慣れてきたら少しずつ増やしていくのがよいでしょう。練習のペースについて気になることは、体験レッスンで講師に質問してみてください。
力が入っているかどうかは、どう確かめればいい?
「肩」「ひじ」「手首」の3か所を、順番に見ていくと確かめやすくなります。力みは、自分では気づきにくいものです。そこで、体操の途中や座った直後に、次の3か所を順に確かめてみましょう。この表は、確認のための一例です。
| 場所 | こうなっていたら力みのサイン | 試すこと |
|---|---|---|
| 肩 | 耳に近づくように持ち上がっている | いったん息を吐き、肩をすとんと落とす |
| ひじ | 身体に張りつく、または突っ張っている | 軽く曲げ、ぶらりと下ろしてから、もう一度構える |
| 手首 | 上がりすぎている、または下がりすぎている | 椅子の高さや、鍵盤との距離を見直す |
特にひじの力を抜くと、身体全体が楽になることがあります。グーパー体操でひじを意識するのは、そのためです。体操のあとで座り方を確かめる、という順番でもかまいません。
もう一つの確かめ方は、手の形を見ることです。指の第1関節がつぶれていないか、手のひらの中に空間が残っているかを見てください。ここが崩れているときは、指先だけに力を集めている可能性があります。無理に直そうとせず、いったん手を下ろして、おにぎりを握る形から、やり直してみましょう。
初めてでも、迷わず試すための流れは?
ここまでの内容を、座る前から鍵盤に触れるまでの流れにまとめると、次のようになります。全部を一度に覚える必要はありません。まず、できそうなところから一つ選んでください。
- まず、椅子に浅く腰かけます。肩の力を抜き、ひじが身体よりも前にあることを確かめます。
- 次に、手を鍵盤に置く前に、ボールを軽くつかむ形をつくります。手のひらに空間が残っているかを見ます。
- そのあと、指の体操を行います。グーパー体操から始めてみてもよいでしょう。
- 鍵盤に触れるときは、指先だけで押さず、腕の重みを預ける感覚を思い出します。
どの段階でも、「窮屈だな」「力が入っているな」と感じたら、一度手を止めて、最初の座り方に戻ってみてください。戻れる場所を決めておくと、迷ったときに戻る場所として使えます。
たとえば、ご自宅に鍵盤がない場合は、1番目から3番目までを試すだけでも十分です。座り方は、ご自宅の椅子で、浅く腰かけて肩の力を抜くところから試せます。手の形は、机の上に手を置いて確かめることができます。体操は、その場ですぐに行えます。そして、実際の鍵盤の前での姿勢や、重みの預け方は、体験レッスンで講師にお尋ねください。
これらは、最初から完璧にそろえるものではありません。続けるうちに、少しずつ自分の身体になじんでいくものです。「今日は座り方だけ」「今日は体操だけ」と、小さく分けて始めることで、楽しみながら続けやすくなります。
痛みや違和感があるときは、どうすればいい?
無理をせず、体操も練習もいったん止めてください。体操は、力まずに行うためのものです。痛みを我慢してまで続けるものではありません。
手や指に痛みが続く場合は、体操や練習の問題ではなく、身体の状態に関わることもあります。この記事は医療の情報を扱うものではないため、気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。
体験レッスンは、どこで受けられる?
天理楽器の音楽教室は、奈良県・京都府・大阪府に9校あります。お住まいや職場から通いやすい校を選んでいただけます。
| 府県 | 教室 |
|---|---|
| 奈良県(6校) | 奈良校/橿原校/生駒校/香芝校/イオンモール大和郡山校/西大和校 |
| 京都府(2校) | イオンモール京都校/京田辺校 |
| 大阪府(1校) | 富田林校 |
西大和校と京田辺校は、教室のみです(店舗はありません)。受付は、西大和校は香芝校、京田辺校は京都校で行っています。校ごとの開講科目は、公式サイトの各校ページでご確認ください。
体験レッスンは、どんな流れなの?
体験レッスンは無料・予約制で、全体でおよそ30分です。最初に顔合わせとヒアリングが10分ほど、そのあと実際のレッスンが20分ほどです。楽器の貸し出しもあります。
| 流れ | 時間の目安 |
|---|---|
| 顔合わせ・ヒアリング | 10分ほど |
| 実際のレッスン | 20分ほど |
体験は「通える曜日」をお伺いしたうえで、実際に担当する講師で受けていただきます。体験で受けた講師が、そのままレッスンを受け持ちます(曜日が変わる場合は、別の講師になることがあります)。体験後のご連絡は、最小限です。
ピアノのレッスンの回数や時間は、科目や校によって異なります。詳しくは各校へお問い合わせください。なお、エレクトーン(電子オルガン)は教えていませんが、キーボードのレッスンは可能です。
講師は、どんな人が教えてくれるの?
講師は、音大卒、専門学校卒、現役の演奏家など、本格的な技術を持つ講師が指導します。初心者・お子さま向けから、資格やコンクールの対応まで、幅広いコース設定があります。発表会やコンサートへ出演する機会も、定期的にご用意しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講師 | 音大卒・専門学校卒・現役演奏家など |
| 教室 | 奈良県6校・京都府2校・大阪府1校の計9校 |
| 科目 | 全体で52科目 |
| 体験 | 無料・予約制・およそ30分・楽器の貸し出しあり |
レッスン日の振替について、知っておくことは?
生徒様の都合によるレッスン日の振替は、行っていません。決まった曜日・時間に通うことで、「音楽のある暮らしのリズム」をつくり、上達につなげていただくためです。
上達には、少しの時間の繰り返しが大切だと考えています。レッスンの日を「この曜日、この時間は音楽の時間」と暮らしのリズムに組み込み、毎回のレッスンを楽しみにしていただけるようにすると、練習のペースが自然に保たれます。続けやすいリズムを、一緒につくっていきます。1分の体操も、そのリズムの入り口として、取り入れやすいものです。
座り方、手の形、そして1分の体操。どれも、特別な道具なしで試せることばかりです。まずは、浅く腰かけて、肩の力を抜くところから始めてみてください。「やってみたら、ピアノがもっと身近になった」と感じていただけたら、うれしく思います。
よくある質問
- ピアノを弾くときの座り方の基本は何ですか?
- 椅子に浅く腰かけることが基本です。深く腰かけると重心が後ろにかかり、腕や指先、ペダルを操作しにくくなります。椅子は肩に余計な力が入らない高さにし、ひじの角度は無理のない範囲が目安です。気になる点は、体験レッスンで講師にご質問ください。
- ピアノの手の形は、どんな形が基本ですか?
- ボールを軽くつかむような、丸みのある形が基本です。指先だけでなく、手のひら全体で形を整えます。おにぎりを軽く握る形や、お水を両手ですくう形も近い形です。余計な力が入ると指の第1関節がつぶれるため、指先だけで弾こうとしないことが大切です。ご自宅では、机の上で形を確かめられます。
- ピアノの前にできる1分間の体操とは、何ですか?
- グーパー体操、指ウェーブ、指のあいさつ、親指回しの4つです。ピアノに向かわなくてもでき、練習の前やあいている時間に行えます。回数はどれも5回程度が目安で、力まずやわらかく動かすことが大切です。
- 指ウェーブは、どんな順番で指を出しますか?
- グーの形から、小指、薬指、中指、人差し指、親指の順に、1本ずつ出してパーに戻します。5回程度が目安です。慣れてきたら、波のように次の指へつなげるイメージで、なめらかに動かします。「トゥルルル」と声に出すと、なめらかになりやすいというコツです。
- 体操をしているとき、力が入っているかどうかは、どう確かめればよいですか?
- 肩、ひじ、手首の3か所を順番に見ていきます。肩が持ち上がっていないか、ひじが突っ張っていないか、手首が上がりすぎたり下がりすぎたりしていないかを確かめてください。特にひじの力を抜くと、身体全体が楽になることがあります。鏡の前で行うか、ご家族に見てもらうのもよい方法です。
- ピアノのレッスンは、月何回で1回何分ですか?
- ピアノは科目や校によって回数・時間が異なるため、ここでは断定できません。詳しくは各校へお問い合わせください。
- 何歳からピアノを習えますか?
- ピアノやリトミックなどは、3歳から始められます。ただし科目によって異なるため、お子さまの年齢での受講については、各校にご相談ください。大人になってから始める方も、シニアの方も、お通いいただけます。まずは体験レッスンで、雰囲気を確かめてください。
制作:天理楽器


